日々、膨大な数の書籍を管理する図書館では、本の虫対策は避けて通れない重要な課題です。私たちは、長年図書館に勤務するベテラン司書のAさんに、その対策の実際についてお話を伺いました。「図書館にとって、本の虫はまさに天敵です」とAさんは語り始めます。「貴重な資料や、多くの利用者が手に取る本を虫害から守ることは、私たちの重要な責務の一つです」。図書館では、まず第一に環境管理を徹底していると言います。書庫や閲覧室の温湿度は、年間を通じて一定の範囲内(一般的に温度20度前後、湿度50〜60パーセント)に保たれるよう、空調設備で厳密に管理されています。「特に湿度管理は重要で、高すぎるとカビや虫が発生しやすくなり、低すぎると本の紙が乾燥して劣化しやすくなるため、常に最適な状態を維持するよう努めています」とのこと。また、定期的な清掃も欠かせません。書架や床の清掃はもちろん、本の埃を払う作業も行われます。これにより、虫の餌となる埃やカビの胞子を除去するだけでなく、虫の早期発見にも繋がります。さらに、図書館に新しく受け入れる本や、寄贈された本については、受け入れ時に状態を厳しくチェックします。虫やカビの痕跡が見つかった場合は、専用の燻蒸庫で殺虫・殺菌処理を行ったり、状態によっては受け入れを見合わせたりすることもあるそうです。「燻蒸処理は、薬剤が本に与える影響も考慮し、必要最低限に留めるようにしています」とAさん。利用者への啓発も重要な取り組みの一つです。「図書館の本は、みんなの大切な財産です。食べ物や飲み物を持ち込まない、濡れた手で触らないなど、基本的なルールを守っていただくことが、本を虫や汚れから守ることに繋がります」と呼びかけます。地道な環境管理と早期発見、そして利用者の協力があってこそ、図書館の蔵書は守られているのです。