都心に近いマンションに一人で暮らすAさんは、ファッションが好きで、クローゼットにはお気に入りの洋服がたくさん詰まっていた。特に、上質な素材のニットやコートには目がなく、毎シーズン少しずつ買い足すのが楽しみだった。しかし、ある年の春、衣替えをしようとクローゼットを開けたAさんは、愕然とした。大切にしていたカシミヤのストールに、小さな穴がいくつも開いていたのだ。それは紛れもなく、虫食いの跡だった。ショックを受けたAさんは、他の衣類も恐る恐る点検した。すると、ウールのセーターやシルクのワンピースにも、同様の被害が見つかった。どこから侵入したのか、いつから被害が始まっていたのか、全く心当たりがなかった。Aさんはまず、被害にあった衣類をビニール袋に入れて隔離し、インターネットで衣類を食べる虫について調べ始めた。ヒメカツオブシムシやイガといった名前、その生態、そして対策方法について情報を集めた。原因を探るうちに、Aさんは自身の衣類管理に問題があったことに気づいた。クリーニングから戻ってきた衣類のビニールカバーをつけっぱなしにしていたこと、クローゼットに服を詰め込みすぎていたこと、そして、防虫剤を使っていなかったこと。これらが複合的に作用し、虫にとって繁殖しやすい環境を作り出してしまっていたのだ。Aさんは、まずクローゼットの中身を全て出し、徹底的な掃除を行うことから始めた。棚板や壁を拭き、掃除機で隅々までホコリを吸い取った。そして、衣類を収納し直す際には、クリーニングのカバーを外し、一枚一枚の状態を確認した。被害が軽微なものは、自分で補修を試み、ひどいものは処分も検討した。収納は、服と服の間にゆとりを持たせ、風通しを意識した。さらに、ドラッグストアで数種類の防虫剤を購入し、説明書をよく読んで、クローゼット用と引き出し用に分けて設置した。防虫剤には有効期限があることも知り、交換時期を忘れないようにカレンダーに印をつけた。Aさんの衣類害虫との静かな戦いは始まったばかりだ。今後も定期的な清掃と換気、防虫剤の交換を続け、二度と被害に遭わないように努めなければならない。この経験を通じて、Aさんはお気に入りの服を長く大切に着るためには、日々の丁寧な管理がいかに重要であるかを学んだのだった。
Aさんのクローゼット衣類害虫との静かな戦い