長年、美しい庭を維持管理されているベテランガーデナーの鈴木さん(仮名)に、花を害虫から守るための秘訣を伺いました。「特別なことは何もしていませんよ」と謙遜される鈴木さんですが、その言葉の端々には、経験に裏打ちされた深い知恵が隠されていました。「一番大切にしているのは、やっぱり日々の観察ですね。毎朝の水やりの時に、ただ水をやるだけでなく、葉の裏や新芽の先、株元などをじっくり見るようにしています。虫も病気も、とにかく早期発見が肝心ですから。小さな変化に気づけば、被害が広がる前に対処できます」。具体的にはどのような対処をされるのでしょうか。「アブラムシなんかは、見つけたらすぐに指で潰したり、古い歯ブラシでこすり落としたりします。数が少ないうちなら、それで十分。薬剤を使うのは、どうしても手に負えなくなった時の最終手段と考えています」。薬剤に頼らない工夫もされているようです。「そうですね、できるだけ自然の力を借りたいと思っています。例えば、コンパニオンプランツ。マリーゴールドは根に線虫を抑える効果があると言われていますし、ナスタチウムはアブラムシを遠ざけるとか。必ずしも劇的な効果があるわけではありませんが、花の近くに植えておくだけでも、少しは違う気がします。あとは、風通しを良くすること。植物が蒸れると、病気も虫も発生しやすくなりますから、適切な剪定や、株間を十分にとることは常に意識しています」。失敗談もおありですか、と尋ねると、「もちろん、たくさんありますよ」と笑います。「昔、良かれと思って肥料をやりすぎて、かえってアブラムシを大量発生させてしまったこともありました。植物が元気すぎても、虫にとってはご馳走になってしまうんですね。何事もバランスが大切だと学びました。土作りも重要ですね。健康な土で育てば、植物自身が病害虫に対する抵抗力を持つようになりますから。堆肥や腐葉土をしっかり入れて、土壌環境を整えることは、時間はかかりますが、一番の予防策かもしれません」。最後に、鈴木さんはこう締めくくりました。「結局、花を育てるというのは、生き物を相手にすること。マニュアル通りにいかないことも多いです。だからこそ、毎日植物と向き合って、その声に耳を傾ける。それが、花を元気に育て、虫から守る一番の秘訣なんじゃないでしょうか」。
達人に学ぶ花を虫から守る秘訣