ユスリカが光に集まる性質は古くから知られており、照明の工夫は有効な対策の一つとされています。近年、LED照明の普及とともに、光の波長(色)と昆虫の誘引性の関係について、より詳細な研究が進んでいます。ユスリカ対策という観点から、この光と虫の関係について少し掘り下げてみましょう。昆虫の多くは、人間には見えない紫外線領域(波長300〜400nm)の光や、青色から緑色にかけての短波長領域の光(波長400〜550nm程度)に強く引き寄せられることが分かっています。これは、昆虫が持つ光受容体の特性によるものです。一方、黄色やオレンジ色、赤色といった長波長領域の光(波長580nm以上)に対しては、誘引されにくい傾向があります。従来の蛍光灯や水銀灯には、紫外線や青色光が多く含まれているため、ユスリカを含む多くの飛翔昆虫を引き寄せていました。しかし、LED照明は、原理的に紫外線放出量が少なく、また、発光させる色を比較的自由に制御できるという利点があります。そのため、ユスリカ対策として屋外照明をLED化する際には、できるだけ波長の長い、暖色系の「電球色」(色温度3000K以下)を選ぶことが推奨されます。さらに進んだ対策として、特定の波長をカットする技術も開発されています。例えば、虫が最も誘引されやすいとされる波長域(例えば500nm以下)をカットした特殊なLED照明や、照明器具にそのような波長をカットするフィルムを貼る方法などがあります。これらの対策は、ユスリカの誘引を大幅に低減できる可能性があります。ただし、ユスリカの種類によっては光への反応性が異なる場合もあるため、全てのユスリカに万能な対策とは限りません。また、照明の色を変えることで、防犯性や景観との兼ね合いも考慮する必要があります。最新の研究動向を踏まえつつ、設置場所の状況に合わせて最適な光環境を選択していくことが重要です。
光の色とユスリカ誘引の関係性最新研究から