それは、ある蒸し暑い日の午後でした。おやつにホットケーキでも作ろうかと、キッチンに置いてある戸棚から小麦粉の袋を取り出した瞬間、私は言葉を失いました。袋の周りだけでなく、戸棚の棚板全体に、まるで白い粉砂糖をぶちまけたかのように、無数の白い点々がうごめいていたのです。最初は粉がこぼれたのかと思いましたが、よく見るとそれは微細な虫の大群でした。体長1ミリにも満たないような、本当に小さな白い虫。これが、噂に聞くコナダニか!全身に鳥肌が立ち、悲鳴を上げそうになるのを必死でこらえました。戸棚の中を恐る恐る確認すると、小麦粉だけでなく、片栗粉や砂糖、開封済みのお菓子など、粉物系の食品は軒並み同じような状態になっていました。特に、封を輪ゴムで留めていただけの古い小麦粉の袋は、虫たちの楽園と化していました。おそらく、これが大発生の原因でしょう。とにかく、この惨状を何とかしなければなりません。私はマスクとゴム手袋で完全防備し、まずは被害にあった食品を全てビニール袋に入れて固く口を縛り、処分することから始めました。もったいない気持ちもありましたが、これを食べる気には到底なれません。次に、戸棚の中を空にして、掃除機で隅々まで虫と粉を吸い取りました。その後、アルコールスプレーを吹き付けた布で棚板を何度も拭き上げ、消毒しました。作業中も、壁や床を這う白い点々が目に入り、気が滅入りました。キッチン全体にも掃除機をかけ、床も念入りに水拭きしました。全ての作業が終わる頃には、もう夕方。心身ともに疲れ果てていました。あの恐怖体験以来、我が家では粉物食品の管理方法を徹底的に見直しました。開封済みのものはもちろん、未開封のものでも、購入後はすぐに密閉性の高い容器に入れ替え、可能な限り冷蔵庫で保管するようにしています。そして、戸棚の中も定期的に清掃・換気し、湿度が高くならないように気をつけています。あの白い絨毯のような光景は二度と見たくありません。皆さんも、キッチン周りの食品管理には十分ご注意ください。
恐怖キッチンが白い粉のような虫で埋め尽くされた日