緑豊かな川沿いに開発された新興住宅地B地区。自然に近い環境が魅力でしたが、入居が始まって最初の夏、住民たちは深刻な問題に直面しました。川から大量のユスリカが発生し、住宅地に押し寄せてきたのです。特に川に近い家では、夕方になると網戸がユスリカで真っ黒になり、窓を開けることもままならない状況でした。住民からは管理組合や開発業者に対して、対策を求める声が多数上がりました。管理組合は専門家を交えて対策会議を開き、多角的なアプローチで問題解決に臨むことを決定しました。まず、短期的な対策として、各戸への侵入を防ぐため、網戸用の忌避剤の共同購入と配布、効果的な使用方法の周知を行いました。また、共用部分である街灯については、虫が集まりにくいLED照明(電球色)への交換を順次進めました。次に、中長期的な視点での発生源対策です。専門家による調査の結果、住宅地内の排水路の一部と、川岸の特定のエリアでユスリカの幼虫が高密度で生息していることが判明しました。そこで、管理組合は自治体と協力し、排水路の定期的な高圧洗浄と、川岸の植生管理(幼虫の生息場所となりやすい水草の除去など)を実施しました。さらに、住民自身ができる対策として、雨水マスの清掃や庭の水たまり管理の重要性を回覧板や説明会で繰り返し呼びかけました。これらの対策を複合的に実施した結果、翌年の夏にはユスリカの発生数が明らかに減少しました。「夜、窓を開けても虫が入ってくる数が格段に減った」「洗濯物を外に干せるようになった」など、住民の満足度は大きく向上しました。このB地区の事例は、問題の特定、短期・長期の対策の組み合わせ、そして住民と管理組織、自治体の連携が、ユスリカ対策を成功に導く上で不可欠であることを示しています。