今回は、長年クリーニング業に携わり、衣類のケアについて豊富な知識を持つ専門家、鈴木さん(仮名)に、家庭でできる効果的な衣類の虫対策についてお話を伺いました。「お客様から『虫に食われてしまった』というご相談は、残念ながら後を絶ちません。特に高級な素材ほど被害に遭いやすい傾向がありますね」と鈴木さんは言います。「でも、ご家庭でのちょっとした心がけで、被害はかなり防げるんですよ。」まず鈴木さんが強調するのは、「しまう前の汚れ落とし」の徹底です。「衣類を食べる虫は、繊維そのものだけでなく、付着した皮脂や食べこぼしの汚れも大好物です。ですから、シーズンオフで衣類をしまう前には、必ず洗濯かクリーニングで汚れを完全に落としてください。『一度しか着ていないから』という油断が、虫を呼び寄せる原因になります。」次に、収納環境についてのアドバイスです。「クローゼットやタンスの中は、虫にとって快適な環境になりがちです。まず、ホコリを溜めないこと。ホコリの中には虫の餌になるものや、虫そのものが隠れていることもあります。定期的に掃除をして、清潔に保つことが基本です。そして、詰め込みすぎないこと。風通しが悪いと湿気がこもり、虫やカビが発生しやすくなります。衣類と衣類の間には、少しゆとりを持たせて収納しましょう。」防虫剤の使い方にもコツがあるそうです。「防虫剤は、密閉された空間で効果を発揮します。クローゼットなら扉をしっかり閉める、衣装ケースなら蓋をきちんと閉めることが大切です。また、防虫成分は空気より重いので、衣類の上に置くのが基本です。製品に書かれている使用量と有効期限を守ることも重要ですね。期限が切れた防虫剤は効果がありませんから、衣替えのタイミングなどで定期的に交換してください。異なる種類の防虫剤を混ぜて使うのは、化学反応を起こす可能性があるので絶対にやめましょう。」最後に、鈴木さんはこう付け加えました。「特別なことをする必要はありません。汚れを落とす、清潔に保つ、風通しを良くする、防虫剤を正しく使う。この基本を守ることが、一番効果的な虫対策なんです。大切な衣類を長く楽しむために、ぜひ実践してみてください」。