ある朝、カーテンを開けると、ベランダの物干し竿の付け根あたりに、見慣れないものがぶら下がっているのに気づいた。灰色の、六角形の穴がたくさん空いた、まさに蜂の巣だ。大きさはまだゴルフボールくらいだろうか。数匹のアシナガバチが、その周りをゆっくりと飛んでいる。ああ、ついに我が家にもこの時が来たか、というのが正直な感想だった。子供が小さいので、蜂の巣は絶対に放置できない。問題は、どうやって駆除するかだ。すぐにスマートフォンで「アシナガバチ 駆除 自分で」と検索を始めた。たくさんの情報が出てくる。まだ小さい巣なら自分でできる、夜間に駆除するのが良い、専用のスプレーが必要、防護服は必須…。読み進めるうちに、だんだんと不安が募ってきた。本当に自分でできるのだろうか。刺されたらどうしよう。アナフィラキシーショックなんてことになったら…。でも、業者に頼むと結構な費用がかかるらしい。数万円は覚悟しないといけないようだ。うーん、悩ましい。数日間、巣の様子を観察し続けた。蜂の数は少しずつ増えているような気がする。巣も心なしか大きくなったようだ。迷っている時間はない。このまま放置すれば、もっと危険になるだけだ。よし、覚悟を決めよう。自分でやる。週末の夜に決行することにした。早速、ホームセンターに必要なものを買いに走った。一番強力そうな殺虫スプレー、念のための雨合羽、厚手の手袋、顔をガードするネット。準備は整った。あとは、決行の夜を待つだけだ。怖い。でも、やるしかない。家族を守るために。そんな決意を胸に、私はその日を迎えることになった。