クローゼットやタンスにしまい込んだ大切な衣類が、いつの間にか虫に食われて穴が開いていた、そんな経験はありませんか。衣類を食べる害虫は、私たちの身近な場所に潜んでいます。被害を防ぐためには、まず敵の正体を知ることが重要です。衣類を好んで食べる代表的な虫には、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、イガ、コイガなどがいます。ヒメカツオブシムシやヒメマルカツオブシムシの成虫は、花の蜜などを好みますが、問題となるのはその幼虫です。幼虫は暗い場所を好み、羊毛(ウール)、絹(シルク)、カシミヤ、皮革、羽毛といった動物性繊維を主食とします。繊維に付着した食べこぼしや皮脂汚れなども栄養源にするため、汚れた衣類は特に被害に遭いやすいと言えます。幼虫は数ミリ程度の毛虫のような形状で、脱皮を繰り返しながら数ヶ月から一年以上かけて成長します。イガやコイガは小型の蛾の仲間です。成虫は直接衣類を食べることはありませんが、衣類に卵を産み付けます。孵化した幼虫が、羊毛や絹などの動物性繊維を食べて成長します。イガの幼虫は、食べた繊維やフンなどで筒状の巣(蓑)を作り、その中に隠れながら移動して衣類を食害するのが特徴です。コイガの幼虫は、繊維を綴り合わせてトンネル状の巣を作り、その周辺を食害します。これらの虫は、共通して暗く、湿気がこもりやすく、ホコリや汚れが溜まっている場所を好みます。クローゼットやタンスの奥、衣装ケースの中などは、彼らにとって格好の住処となり得るのです。また、彼らは非常に小さいため、ドアの隙間や換気口、窓などから容易に侵入してきます。これらの虫の生態を知り、彼らが好む環境を作らないことが、衣類を虫食いから守るための第一歩となります。