クローゼットの小さな脅威ヒメカツオブシムシ
衣替えの季節、久しぶりに取り出したセーターやコートに小さな穴が開いていた、あるいはタンスの隅に茶色くて毛の生えた小さな幼虫がいた、という経験はありませんか。その原因は、もしかしたら「ヒメカツオブシムシ」かもしれません。ヒメカツオブシムシは、カツオブシムシ科に属する小さな甲虫の一種です。成虫は体長2.5ミリから3ミリ程度の楕円形で、黒地に白や黄褐色のまだら模様があるのが特徴です。春先から初夏にかけて、マーガレットやヒメジョオンなど白い花の蜜や花粉を求めて屋外を飛び回る姿を見かけることもあります。しかし、問題となるのはその幼虫です。幼虫は体長4ミリから5ミリ程度の芋虫状で、全体が赤褐色や黄褐色の毛で覆われており、お尻に長い毛束があるのが特徴です。この幼虫が、私たちの家庭内で様々な被害を引き起こします。ヒメカツオブシムシの幼虫は、動物性繊維、特に羊毛(ウール)や絹(シルク)、カシミヤ、羽毛、皮革などを好んで食べます。そのため、衣類や毛織物、絨毯、ぬいぐるみなどが主な被害対象となります。また、動物性繊維だけでなく、鰹節や煮干し、ペットフードといった乾燥食品、さらには昆虫標本や剥製、古文書なども食害することがあります。彼らは暗くて暖かい場所を好み、クローゼットやタンスの隅、衣類の折り目、カーペットの下、家具の隙間などに潜んでいることが多く、人目につきにくい場所で静かに被害を広げていきます。大切な衣類や食品を守るためには、まずこの小さな害虫の正体と生態を知り、早期発見と適切な駆除、そして予防策を講じることが重要になります。