浴室や洗面所、あるいは庭の植木鉢の下などで、灰色や黒褐色の平たい小さな虫がうごめいているのを見かけることはありませんか。それは多くの場合、「ワラジムシ」と呼ばれる生き物です。ダンゴムシによく似ていますが、体を丸めることができないのが特徴です。体長は1センチメートル前後で、たくさんの脚を持ち、湿っていて暗い場所を好みます。彼らは森林の土壌や落ち葉の下などに生息し、腐った植物や枯れ葉、菌類などを食べる分解者として、自然界の物質循環において重要な役割を担っています。その意味では、自然界においては益虫と言える存在です。しかし、ひとたび家の中に侵入してくると、その見た目から不快害虫として扱われることが多くなります。特に、湿気が多く、餌となる有機物(ホコリやカビ、壁紙の糊など)がある環境が整ってしまうと、家の中で繁殖してしまう可能性もあります。ワラジムシは人間を刺したり、病気を媒介したりすることはありません。直接的な健康被害を与えることはありませんが、大量に発生すると、その存在自体が精神的なストレスになったり、見た目の不潔感を与えたりします。家の中でワラジムシを見かけた場合、まず考えるべきは「なぜ家の中にいるのか」ということです。彼らが好む湿った環境が家の中や周辺に形成されていないか、侵入経路となる隙間がないかなどを確認することが、駆除と予防の第一歩となります。むやみに殺虫剤を撒く前に、彼らの生態と好む環境を理解し、発生原因を取り除くことを目指しましょう。