天気の良い日に公園のベンチに座っていると、足元のアスファルトの上を、小さな黒い点が一列になって忙しそうに動いているのを見かけることがある。そう、蟻の行列だ。食べ物のかけらか何かを見つけたのだろうか、巣穴と思われる場所へと、せっせと何かを運んでいる。ぼんやりとその行列を眺めていると、色々なことに気づかされる。まず、その勤勉さだ。一匹一匹は非力で小さいけれど、それぞれが自分の役割を黙々とこなし、集団として大きな目的(食料確保や巣の維持)を達成しようとしている。誰に命令されるでもなく、ただひたすらに、列を乱さずに行進する姿には、ある種の健気さすら感じる。次に、その統率力と効率性だ。道しるべフェロモンという化学物質を使って、あれだけ多くの個体が迷うことなく最短経路で目的地と巣を往復できるシステムは、実に見事だと思う。無駄な動きが少なく、全体の流れが非常にスムーズだ。人間社会で同じことをやろうとしたら、どれだけのルールと指示が必要になるだろうか。そして、彼らの社会性。自分のためだけでなく、巣全体の仲間たちのために働くという利他的な行動は、人間も見習うべき点があるのかもしれない。もちろん、彼らの行動は本能や化学物質にプログラムされたものであり、人間のそれとは違う。でも、あの小さな体で、あれだけの組織を作り上げ、協力し合って生きている姿を見ていると、生命のたくましさや、自然界の精巧な仕組みに、ただただ感心してしまうのだ。時には、行列の途中で障害物にぶつかったり、仲間とはぐれたりしている蟻もいる。それでも、彼らは諦めずに迂回路を探したり、仲間を探したりして、また列に戻ろうとする。その姿に、なんだか勇気づけられるような気もする。普段は気にも留めない道端の蟻の行列だけど、少し立ち止まって観察してみると、そこには私たちが学ぶべき、たくさんの知恵と力強さが詰まっているように思えてならない。