「花の女王」とも称されるバラは、その美しさで多くの人々を魅了しますが、同時に様々な害虫の標的となりやすい植物でもあります。美しい花を咲かせ、健やかに育てるためには、バラ特有の害虫を知り、適切な対策を講じることが不可欠です。バラに発生しやすい代表的な害虫の一つが、アブラムシです。春先の新芽や蕾にびっしりと群がり、樹液を吸って株を弱らせるだけでなく、すす病などの原因にもなります。発見したら、数が少ないうちに粘着テープで取るか、水で洗い流しましょう。大量に発生した場合は、バラに使用できる殺虫剤を散布します。次に注意したいのが、チュウレンジハバチの幼虫です。オレンジ色の体に黒い斑点を持つこの幼虫は、集団で葉を猛烈な勢いで食害し、あっという間に葉脈だけを残してしまいます。成虫は若い茎に産卵し、産卵痕が縦に裂けたようになるのも特徴です。幼虫を見つけ次第、捕殺するのが最も効果的です。薬剤を使用する場合は、幼虫に直接かかるように散布します。葉の裏に寄生し、白いかすり状の斑点をつけながら汁を吸うのがハダニです。乾燥した環境を好むため、特に夏場に発生しやすくなります。こまめな葉水(葉に水をかけること)で乾燥を防ぐのが予防の基本ですが、発生してしまった場合は、専用の殺ダニ剤を使用します。バラの蕾や花に穴を開けたり、花弁を食害したりするのは、ハナムグリやコガネムシの成虫です。見つけ次第捕殺します。特にコガネムシの幼虫は土の中にいて根を食害するため、株の生育が悪くなった場合は、根元の土を掘って確認し、見つけたら駆除する必要があります。これらの害虫対策として、薬剤散布も有効ですが、使用する際は必ずバラへの適用があるかを確認し、用法用量を守りましょう。また、同じ薬剤を使い続けると抵抗性がつく可能性があるため、異なる系統の薬剤をローテーションで使用するのが効果的です。日頃からバラの様子をよく観察し、異常を早期に発見すること、そして株が元気に育つように適切な剪定や施肥、水やりを行い、風通しを良く保つことが、害虫に負けないバラを育てるための基本となります。