私は自他共に認める古本好きだ。新しい本ももちろん読むけれど、古書店を巡り、誰かの手を経てきた物語や知識の詰まった一冊に出会う瞬間に、たまらない魅力を感じてしまう。紙の質感、インクの匂い、そして時折見かける前の持ち主の書き込み。それら全てが、その本だけの歴史を物語っているようで愛おしい。しかし、そんな古本愛好家にとって、避けては通れない小さな悩みがある。それが、「本の虫」との遭遇だ。特に、戦前の本や、保存状態があまり良くなかった本には、チャタテムシやシミといった小さな住人が潜んでいることがある。初めて遭遇した時は、正直ぎょっとした。大切にしたい本に虫がいるなんて、考えたくもなかった。でも、古本を愛するということは、こういうリスクも受け入れることなのかもしれない、と次第に思うようになった。もちろん、見つけたら丁重にお引取り願う。柔らかい筆でそっと払い、風通しの良い日陰で本にご休息いただく。薬剤を使うのは、本を傷めそうでためらわれる。幸い、私の蔵書で深刻な被害が出たことはまだない。それは、古本を購入したらまず状態を確認し、必要なら「お手入れ」をするという習慣をつけているからかもしれない。本棚の風通しを良くし、除湿剤を置くのも欠かさない。それでも、完全に防ぐことは難しいのだろう。だから、私は本の虫を「古本が生きている証」とまでは言わないけれど、「古本についてくる小さな付属品」くらいに捉えるようにしている。彼らもまた、その本の歴史の一部なのかもしれない、なんて感傷的なことを考えたりもする。もちろん、増えすぎたり、本を傷つけたりするのは困る。だから、これからも愛情を持って本を点検し、適切な環境を保つ努力は続けるつもりだ。古本との付き合いは、ちょっとした手間と、ほんの少しの寛容さが必要なのかもしれない。
本と虫と私古書愛好家の小さな悩み