近年、世界的に被害が拡大しており、日本でも相談件数が増えているのが「トコジラミ(南京虫)」による被害です。もし布団で寝ている間に激しいかゆみを伴う虫刺されに悩まされているなら、トコジラミの可能性も疑ってみる必要があります。トコジラミは体長5ミリメートルから8ミリメートル程度の扁平な体をした赤褐色の昆虫で、カメムシの仲間に分類されます。名前に「シラミ」とありますが、シラミとは全く異なる生き物です。彼らは夜行性で、昼間はベッドのマットレスの縫い目や裏側、ヘッドボードの隙間、壁の隙間、家具の裏、カーテンの折り目、畳の縁など、暗くて狭い場所に潜んでいます。そして、人が寝静まった夜間に這い出してきて、皮膚から吸血します。吸血時間は数分から十数分に及び、吸血後は再び隠れ家に戻ります。トコジラミに刺されると、強いかゆみを伴う赤い発疹が現れます。刺され跡は、蚊やダニと異なり、2箇所が対になっていたり、いくつかの刺し跡が線状に並んだりする特徴が見られることがあります。刺される場所は、首、腕、手、足など、布団から露出している部分が多いですが、服の中に潜り込んで刺すこともあります。トコジラミの被害が厄介なのは、その生命力と繁殖力の強さ、そして駆除の難しさにあります。彼らは飢餓に強く、吸血しなくても数ヶ月以上生き延びることができ、メスは一生のうちに数百個の卵を産みます。また、多くの殺虫剤に対して抵抗性を持つ個体(スーパートコジラミ)が増えているため、市販の殺虫剤だけでは完全に駆除するのが非常に困難です。もし、布団周りでトコジラミの成虫や幼虫、米粒のような白い卵、あるいは血糞(吸血後に排泄する黒っぽいシミ)を発見した場合は、被害が拡大する前に、速やかに専門の害虫駆除業者に相談することを強くお勧めします。トコジラミの駆除は、専門的な知識と技術、そして強力な薬剤が必要となる場合が多いのです。安易な自己判断は、かえって被害を広げてしまう可能性があります。
恐怖のトコジラミ布団に潜む吸血鬼