私たちは、長年害虫駆除に携わる専門家、山田さん(仮名)に、一般家庭を悩ませる蟻の大群についてお話を伺いました。「蟻の大群に関するご相談は、一年を通してありますが、特に梅雨時期から夏場にかけて増える傾向にありますね」と山田さんは語ります。プロの目から見て、蟻の大群が発生する主な原因は何なのでしょうか。「やはり、餌と水、そして巣を作る場所、この三つの条件が揃ってしまうことです。特にチャバネゴキブリと並んで厄介なのがイエヒメアリです。非常に小さく、わずかな隙間からでも侵入し、砂糖や菓子くずなど、ほんの少しの餌で大群を成してしまいます」。駆除の依頼があった際、まず何から始めるのでしょうか。「まずは徹底的な調査です。蟻の種類を特定し、どこから侵入しているのか、どこに巣があるのか、そして何に集まっているのかを探ります。行列を丁寧に辿っていくのは基本中の基本ですね。時には壁の中や床下に巣があることもあり、ファイバースコープなどを使って調査することもあります」。駆除方法について尋ねると、「蟻の種類や発生状況によって最適な方法は異なりますが、一般家庭ではベイト剤(毒餌剤)を主体に駆除計画を立てることが多いです。ベイト剤を巣に持ち帰らせて、巣ごと駆除するのが最も効果的だからです。ただし、ベイト剤の効果が十分でない場合や、即効性が求められる場合は、状況に応じて液剤の散布や、侵入経路の閉鎖なども併用します」。自分での対策に限界を感じた場合は、どのタイミングでプロに相談すべきでしょうか。「市販の薬剤を試しても一向に改善しない、被害が広範囲に及んでいる、巣の場所が特定できない、といった場合は、早めにご相談いただくのが良いでしょう。特にアルゼンチンアリのような特定外来生物の場合は、地域全体への拡散を防ぐためにも、専門的な駆除が不可欠です」。最後に、山田さんはこう付け加えました。「蟻は非常に社会性の高い昆虫です。その組織力と適応力は驚くべきものがあります。だからこそ、対策には専門的な知識と経験が必要になるのです」。
蟻駆除のプロが語る集団の秘密