「床に少し粉が出ているけど、まあ大丈夫だろう」「小さな穴だから気にならない」。キクイムシの被害を発見しても、つい、このように考えて放置してしまうケースがあります。しかし、キクイムシの被害を甘く見てはいけません。初期の段階で適切な対処を怠ると、後々、深刻な事態を招く可能性があるのです。最も懸念されるのは、建物の構造的な強度低下です。キクイムシの幼虫は、木材の内部をスポンジ状になるまで食い荒らしていきます。被害がフローリングだけでなく、床を支える根太や大引、さらには柱や梁といった重要な構造材にまで及ぶと、木材の強度が著しく低下します。その結果、床が沈んだり、軋んだりするだけでなく、最悪の場合、地震などの際に建物の倒壊リスクを高めることにもなりかねません。特に、見えない床下や壁内部で被害が進行している場合、気づいた時には手遅れという状況も考えられます。また、被害の進行は、当然ながら住宅の資産価値を大きく下げる要因となります。将来的に家を売却しようと考えた際に、キクイムシ被害が発覚すれば、買い手が見つかりにくくなったり、大幅な価格の下落を招いたりする可能性があります。修繕費用も、被害が広がれば広がるほど高額になります。初期段階であれば比較的安価な費用で駆除できたものが、放置した結果、大規模な駆除工事や、場合によっては構造材の交換といった高額なリフォームが必要になるケースもあります。さらに、精神的なストレスも無視できません。常に「家に虫がいるかもしれない」という不安を抱えながら生活するのは気分の良いものではありませんし、木粉の掃除に追われる日々も苦痛です。ある事例では、数年間キクイムシの被害を放置していた住宅で、床の一部が抜け落ちる寸前まで劣化が進んでいたことが判明しました。幸い事故には至りませんでしたが、駆除と修復には数百万円の費用がかかったそうです。キクイムシの被害は、単なる「虫の問題」ではなく、家の安全性や資産価値、そして住む人の安心に関わる重大な問題なのです。小さな兆候を見逃さず、早期に対処することの重要性を、改めて認識する必要があります。
キクイムシ被害放置が招く家の危機