あれは、梅雨時の蒸し暑い日の午後のことでした。キッチンで昼食の後片付けをしていると、床の隅に黒いものが動いているのに気づきました。最初はゴミかと思ったのですが、よく見るとそれは小さな蟻でした。まあ、一匹くらいなら仕方ないか、とティッシュでつまんで捨てました。しかし、それが悪夢の始まりだったのです。数時間後、再びキッチンに立つと、さっき蟻がいたあたりから壁際にかけて、信じられない光景が広がっていました。床が、まるで黒い絨毯を敷き詰めたかのように、おびただしい数の蟻で埋め尽くされていたのです。文字通りの「蟻の大群」。その数は千匹か、いや万匹か、見当もつきません。ゾワッと全身に鳥肌が立ち、思わず短い悲鳴を上げてしまいました。どこからこんなに湧いてきたのか、原因を探ると、どうやら換気扇の隙間から侵入し、床に落ちていたわずかなお菓子の食べこぼしに群がっているようでした。その行列は、換気扇から餌場まで、そしてまた換気扇へと、途切れることなく続いています。とにかくこの状況を何とかしなければと、慌てて殺虫剤を探しました。しかし、これだけの数にスプレーをかけたところで、焼け石に水なのではないかという絶望感に襲われます。それでも意を決してスプレーを噴射すると、蟻たちは一瞬混乱したように動き回りましたが、すぐにまた統制を取り戻し、薬剤のかかっていない場所へと行列を作り直そうとします。その生命力と組織力に、恐怖と同時にある種の感嘆すら覚えました。結局、その日は殺虫剤を何本も使い、掃除機で吸い取り、床を何度も拭き掃除するという格闘を数時間続けることになりました。夜にはようやく蟻の姿は見えなくなりましたが、あの黒い絨毯のような光景は脳裏に焼き付いて離れません。それ以来、食べこぼしには細心の注意を払い、換気扇の隙間にはテープを貼って侵入経路を塞ぎました。蟻の大群の恐ろしさを、身をもって体験した一日でした。