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女王蜂の活動時間!春の単独行動を見逃すな
アシナガバチのコロニー全体の運命は、春先に活動を開始する、たった一匹の女王蜂の肩にかかっています。この女王蜂がいつ、どのように活動するのかを知ることは、アシナガバチの巣作りを未然に防ぐための最も重要な鍵となります。冬眠から目覚めた女王蜂の活動時間は、働き蜂とは少し異なる特徴を持っています。女王蜂が冬眠から目覚めるのは、気温が安定して15℃を超えるようになる4月頃です。彼女の最初の活動は、越冬中に消耗した体力を回復させるため、花の蜜などを吸ってエネルギーを補給することから始まります。そして、体力が回復すると、次なる重要なミッション、すなわち「巣作り場所の探索」を開始します。この偵察活動が行われるのが、主に日中の暖かい時間帯です。気温が十分に上がり、風の穏やかな日の午前10時から午後3時頃にかけて、女王蜂は一匹で飛び回り、巣を作るのに最適な場所を探します。軒下、ベランダの天井、エアコンの室外機の裏、窓のサッシの上など、雨風をしのげる閉鎖的な空間を、丹念に見て回るのです。壁に止まってみたり、隙間に入り込んでみたりと、その動きは働き蜂のせわしない餌探しとは異なり、どこか吟味するような、ゆっくりとしたものに見えることもあります。この単独飛行の時間こそが、私たちにとって最大のチャンスです。なぜなら、この女王蜂はまだ巣も卵も持たず、守るべきものがないため、攻撃性が非常に低いからです。また、働き蜂という兵隊もいません。この段階で、女王蜂に「この場所は巣作りに適さない」と思わせることができれば、夏の大量発生という悪夢を回避できるのです。具体的には、この時間帯に家の周りを見回り、もし偵察中の女王蜂を見かけたら、その周辺に蜂用の忌避スプレーを噴霧しておくのが非常に効果的です。春の日中、暖かな日差しの中で見かける一匹のアシナガバチ。そののどかな光景の裏に隠された意味を理解し、その活動時間内に対策を打つこと。それこそが、最も賢明で平和的なアシナガバチ対策と言えるでしょう。
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チャバネゴキブリの卵に殺虫剤は効かない?その理由と対策
家の中でチャバネゴキブリの成虫を見つけ、慌てて殺虫スプレーで退治した後、近くに落ちていた茶色いカプセル(卵鞘)にも念のためスプレーを吹きかけておいた。これで一安心、と思うかもしれませんが、残念ながらその対策は、ほとんど効果がありません。チャバネゴキブリの卵鞘は、殺虫剤に対して驚くべき耐性を持っているのです。その理由は、卵鞘が持つ強固なバリア機能にあります。卵鞘の殻は、タンパク質とキノン類が結合した、非常に硬くて密な構造をしています。これは、物理的な衝撃や乾燥から内部の卵を守るだけでなく、多くの化学物質の浸透を防ぐ役割も果たしています。市販のエアゾール式殺虫剤の主成分であるピレスロイド系薬剤は、ゴキブリの神経系に作用して麻痺させる効果がありますが、この強固な殻を通り抜けて、内部の卵にまで到達することは非常に困難です。そのため、卵鞘の表面にどれだけ殺虫剤を吹き付けても、中の卵はダメージを受けることなく、やがて時が来れば元気に孵化してしまうのです。これが、ゴキブリ駆除において「卵には殺虫剤が効かない」と言われる所以です。では、どうすれば卵の段階で根絶できるのでしょうか。最も確実な方法は、前述の通り「物理的に破壊して処理する」ことです。しかし、全ての卵鞘を発見するのは至難の業です。そこで重要になるのが、孵化してきた幼虫を確実に駆除するという、次善の策です。そのために有効なのが、「残留性の高い殺虫剤」や「ベイト剤(毒餌)」の設置です。例えば、燻煙剤を使用した直後は効果がなくても、その後卵鞘から孵化した幼虫が、床や壁に残った殺虫成分に触れて死ぬ、という効果が期待できます。また、ベイト剤を産卵場所の近くに設置しておけば、孵化した幼- 虫が最初の餌としてそれを食べ、駆除することができます。卵そのものを殺すのは難しくとも、生まれてきた赤ちゃんを待ち構えて仕留める。それが、殺虫剤を使った卵対策の現実的なアプローチと言えるでしょう。