チャバネゴキブリとの戦いにおいて、目の前の成虫や幼虫をスプレーで叩いても、それは単なるモグラ叩きに過ぎません。彼らの繁殖サイクルを根本から断ち切るには、全ての元凶である「卵」、そしてその卵を産む「巣」にいる仲間を根絶やしにする必要があります。それを可能にするのが、現代のゴキブリ駆除における最終兵器、「ベイト剤(毒餌)」です。ベイト剤がなぜ卵対策にまで効果を発揮するのか、その巧妙なメカニズムを解説します。ベイト剤には、フィプロニルなどの「遅効性」の殺虫成分が含まれています。これは、食べたゴキブリがすぐに死なず、数時間から数日かけてゆっくりと効果が現れるのが特徴です。餌を食べたチャバネゴキブリは、何も知らずに巣へと帰っていきます。そして、巣の中で死んだり、毒を含んだフンをしたりします。ここからが、ベイト剤の真骨頂である「ドミノ効果」の始まりです。ゴキブリは共食いの習性があり、仲間の死骸やフンを食べます。巣にいた他のゴキブリ(幼虫を含む)が、毒の含まれた死骸やフンを食べることにより、殺虫成分が次々と巣の中にいる仲間へと連鎖していくのです。この効果により、直接ベイト剤を食べていない個体まで駆除することができます。では、これがなぜ卵対策になるのでしょうか。まず、卵鞘を持ち歩いているメスがベイト剤を食べれば、そのメスが死ぬことで、孵化直前だった卵鞘も一緒に駆除できます。さらに重要なのが、生き残った卵鞘から孵化した後の対策です。産卵場所の近くにベイト剤が設置されていれば、孵化したばかりの赤ちゃんゴキブリが、生まれて初めて口にする餌が毒餌となります。これにより、赤ちゃんゴキブリが成長して次世代の親になる前に、初期段階で駆除することができるのです。スプレーが届かない場所に産み付けられた卵、殺虫剤が効かない卵鞘。この難攻不落の要塞を攻略する鍵は、孵化してきた赤ちゃんを待ち構えて仕留めるという戦略にあります。