日本の家庭で遭遇するゴキブリは、主に「クロゴキブリ」と「チャバネゴキブリ」の二種類です。どちらも不快な害虫であることに変わりはありませんが、その卵の産み方や繁殖戦略には、実は大きな違いがあります。この違いを理解することは、より効果的な駆除計画を立てる上で役立ちます。まず、卵鞘(らんしょう)の見た目と中身です。「クロゴキブリ」の卵鞘は、黒っぽく、大きさは1cm前後と比較的大きいです。中に入っている卵の数は、約20〜28個です。一方、「チャバネゴキブリ」の卵鞘は、薄茶色で、大きさは5〜8ミリと小さめですが、中には約30〜40個もの卵が詰まっており、より「多産」であることがわかります。次に、最も大きな違いが「産卵方法」です。クロゴキブリのメスは、形成した卵鞘をすぐに体から離し、物陰に産み付け(貼り付け)ます。卵は、産み付けられてから孵化するまで、約40〜50日という長い時間を、親の保護なしで過ごします。一方、チャバネゴキブリのメスは、卵鞘を孵化の直前まで、約3週間もの間、自分のお尻の先に付着させたまま持ち歩きます。これは、卵を外敵や乾燥から守るための、非常に手厚い「育児行動」と言えます。この習性の違いが、駆除の難易度にも影響します。クロゴキブリは卵鞘を産みっぱなしにするため、家のどこかに忘れられた卵鞘が、駆除作業の後で孵化するということが起こり得ます。対してチャバネゴキブリは、メスが卵鞘を持ち歩いているため、メスの成虫を駆除できれば、そのメスが持っていた卵も一緒に駆除できることになります。しかし、彼女たちは危険を察知すると卵鞘を切り離すため、油断はできません。成長速度も大きく異なり、クロゴキブリが成虫になるのに1年以上かかるのに対し、チャバネゴキブリはわずか2ヶ月です。この圧倒的な繁殖サイクルの速さが、チャバネゴキブリをより厄介な存在にしているのです。