チャバネゴキブリが「害虫の王様」とまで呼ばれる理由は、その神出鬼没さや不潔さだけではありません。彼らの最も恐るべき能力は、その異常なまでの「繁殖力」にあります。一匹のメスが、その一生でどれほどの数の子孫を残すのか。その驚異的な繁殖サイクルを知れば、早期発見・早期駆除がいかに重要かが痛いほどわかります。チャバネゴキブリのメスは、成虫になってから約1〜2週間で交尾が可能になり、その後、最初の卵鞘を産みます。彼女たちは、この卵鞘を孵化の直前までお尻につけて保護し、安全な場所に産み落とすと、わずか数日後には次の卵鞘の形成を始めます。このサイクルを、死ぬまで何度も繰り返すのです。その生涯産卵回数は、平均して3〜7回、多い個体では8回以上にも及びます。そして、一つの卵鞘には平均30〜40個の卵が入っています。仮に、一匹のメスが生涯で5回産卵し、一つの卵鞘から35匹の幼虫が生まれると仮定すると、たった一匹のメスから、生涯で175匹もの子供が生まれる計算になります。しかし、本当の恐怖はここからです。チャバネゴキブリの成長速度は非常に速く、暖かい環境下では、卵から孵化した幼虫が、わずか2ヶ月程度で成虫となり、繁殖活動を開始します。つまり、最初に生まれた子供たちが、2ヶ月後には孫世代を産み始めるのです。このネズミ算式の繁殖が、彼らの個体数を爆発的に増加させる原因です。理論上、一組のつがいが、環境条件さえ整えば、一年後には数万匹以上の子孫を残す可能性があるとさえ言われています。もちろん、これは全ての個体が生き残り、順調に繁殖した場合の計算ですが、彼らが持つポテンシャルの高さを示しています。家の中でチャバネゴキブリのメスを一匹見過ごすことは、数ヶ月後には数百、数千のゴキブリが住み着く未来を許容することと同義なのです。この事実を前にすれば、もはや一匹たりとも見逃すことはできないはずです。
一匹のメスが生む卵の数!チャバネゴキブリの恐るべき繁殖サイクル